住まいのQ&A>排水トラブル

排水のトラブルについて

排水が詰まった!

洗濯排水が詰まってしまいました。どうしたらよいでしょうか?

トラップ部分での詰りの場合は溜まった糸クズを除去することで改善する場合があります。

洗面が詰まってしまいました。どうしたらよいでしょうか?

通常の一時的な詰りであればラバーカップを用いることで改善する場合があります。
汚れの付着や異物を流された場合は高圧洗浄や分解清掃で対応する必要がありますので、その場合は管理会社又は設備業者にご連絡下さい。ほとんどの詰りの原因は髪の毛もしくは糸ようじなどの異物を流したことによる詰りがほとんどです。収納庫内のSトラップに掃除口がある場合はそこから異物の取り出しができます。
コロナ禍以降は洗面の詰りが多く発生しております。ライフスタイルの変化やマウスウォッシュの使用により排水トラップ内にグリセリンが残ることで微生物が繁殖しやすいのではないかと考えられます。うがい後に十分に水を流すことで詰まりを回避できます。

台所流しが詰まってしまいました。どうしたらよいでしょうか?

排水詰まりの多くは、排水トラップ部分で発生しています。まずは排水トラップを分解し、内部にたまった汚れや異物を取り除いてください。排水トラップに詰まりが見られない場合は、配管内部に原因がある可能性があります。特に台所の詰まりは、油脂類の付着によるケースが多く、ワイヤー式清掃や高圧洗浄による対応が必要となります。その場合は、管理会社または専門の清掃業者にご連絡ください。詰まりを予防するためには、できるだけ油分を排水口に流さないようにし、洗い物の後には十分な量の水を流すことが効果的です。

トイレが詰まってしまいました。どうしたらよいでしょうか?

通常の一時的な詰まりであれば、ラバーカップを使用することで改善する場合があります。ラバーカップは押すのではなく引いて使います。ゆっくりとラバーカップの中の空気を抜きながら押して一気に引っ張ることで詰まった物を手前に引き出して詰りを解消します。引くときに水を被らないようにごみ袋の底に小さな穴をあけてラバーカップの柄を通して使用してください。
※日本製のトイレットペーパーであればJIS規格に基づいて製造されており、300mlの水に浸して回転させて100秒以内に溶けることが定められています。大量にトイレットペーパーを流されて詰まった場合には少し時間を置けば溶けて流れやすくなります。
ティッシュペーパーの主な性質として主にパルプを原料とし、薄く、肌触りが良いのが特徴です。一般的に水に溶けにくい性質を持っています。そのため、トイレに流すと詰まりの原因になることがあります。海外製のトイレットペーパーも同様の性質があります。

異物を流された場合は、便器を脱着して対応する必要があるため、その場合は管理会社または設備業者にご連絡いただき、対応をお願いすることになります。

近年では、病気による投薬の影響で糞尿中にグルコース(糖分)が排出されることがあります。この糖分が便器内で細菌の餌となり、バイオフィルムが形成されて詰まりの原因になるケースが増えています。
したがって、用を足した後にはすぐに十分な水量で流していただくことで、詰まりを回避できます。※メトホルミンは便中に、SGLT2阻害薬は尿中にグルコースが排出されます。

浴室排水が詰まってしまいました。どうしたらよいでしょうか?

浴室での詰りの原因の多くは毛髪によるものです。先ずは排水トラップの分解清掃を行うようにしてください。
トラップではなく配管の場合の通常の一時的な詰りであればラバーカップを用いることで改善する場合があります。
汚れの付着や異物を流された場合は高圧洗浄や分解清掃で対応する必要がありますので、その場合は管理会社又は設備業者にご連絡下さい。

雨水桝が詰まってしまいました。どうしたらよいでしょうか?

降雨時に外部の雨水桝や共用廊下の側溝があふれているような場合があります。
雨水桝の内部を確認すると配管の中が土と木の根で詰まっています。このような場合には特殊な工具(ロッド)により根を切ったうえで高圧洗浄を行う必要があります。管理組合または管理会社に連絡してください。

排水から異臭!

臭気と封水について(排水口から臭気が出てくるのですが?)

排水口には、トラップと呼ばれる「排水は流れるが空気は遮断する」仕組みの器具が取り付けられています。現在、一般的に採用されているトラップは水封式トラップであり、水をためる部分が設けられています。
この部分には排水の一部が溜まり、それを封水と呼びます。封水の水面が下がると、空気が常に通過するようになり、臭気や虫が侵入する原因となります。※排水トラップは少なくとも月に一回程度は分解清掃してください。

先ずは排水トラップに水が溜まっているか確認し、減少している様であれば水を足してください。

なお、トラップの主な封水損失現象には、以下のようなものがあります。

誘導サイホン:他住戸の排水時に封水が引っ張られる。
自己誘導サイホン:溜め流し時に封水が引っ張られる。
蒸発:長期間未使用で封水が蒸発する。※長期間未使用の食洗器は要注意です。



近年ではシックハウス症候群を予防し、室内の空気を快適に保つ目的で24時間換気が設置されております。給気口のフィルターの目詰まりや締まっていると、給気ができずに部屋の中が負圧になることで、玄関ドアの開け閉めにより気圧変動で封水が減少します。
    


※まれなケースですが、一部のメーカーのドラム式洗濯乾燥機において、乾燥運転時に排水ホースから温風の出るタイプのものがあり、温風により封水が乾燥して臭気が発生する事例もあります。※除湿方式を「空冷除湿方式」→「水冷除湿方式」に変更すると改善するようです。

排水から異音!

排水口から音がするのですが?

排水口には、「排水は流れるが空気は遮断される」という仕組みのトラップと呼ばれる器具が取り付けられています。現在、一般的に使用されているのは水封式トラップで、水を溜めることで封水層を形成し、臭気や害虫の逆流を防いでいます。

この封水が排水立管内で発生する圧力の変動によって押し出されたり吸い込まれたりすると、「ゴボゴボ」「ポコポコ」といった音が発生します。こうした音は、排水立管が汚れなどにより閉塞している場合や、下層階では1階共用部の横引き配管に不具合があるときに発生しやすくなります。
※排水管内で水が流れる際には、水が周囲の空気を引き込み、その体積は排水の5~10倍の空気を引っ張ると一般的に言われています。この現象は、排水管内の圧力変化や適切な通気がない場合に、ボコボコという音の原因となることがあります。

ご自身で水を使用していないにもかかわらず、上記のような音が聞こえる場合は、共用部の排水配管に不具合が生じている可能性があります。その際は管理組合または管理会社へご連絡ください。
また、排水トラップに水がしっかりたまっているかを確認し、封水が減っているようであれば、水を補充してください。

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さらに、排水管内の汚れとは関係なく、建物の形状が原因で音が発生する場合もあります。 特に台風や冬季の北風など、強風時には屋上で大きな気圧の変動が起こります。研究によれば、建物の風上側では正圧、風下側では負圧となり、排水管の頂部に設置されている通気管に影響を及ぼします。

たとえば、台風時に屋上の風下側にある通気管付近で大きな負圧が生じると、排水立管内の空気が吸い出され、内部が負圧状態になります。その結果、建物の最上階やその下の階の排水トラップの封水が引っ張られ、「ゴボゴボ」などの音が発生することがあります。

このような現象が起きた場合は、風が収まるまでの一時的な対策として、ビニール袋などに水を入れて排水口を塞ぐことで音を防ぐことができます。恒久的な対策としては、屋上の通気管付近に大きな負圧が生じないよう、通気管の周囲に工作物(風よけ)を設ける方法があります。ただし、屋上に塔屋などの構造物がある場合は風の流れが非常に複雑になるため、改善には時間と検討を要する場合があります。

   
空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2016.9.14〜16(鹿児島)}CFDによるベントキャップ周辺気流及び通気管内圧力に関する研究より引用

排水から害虫!

排水口から虫が出てくるのですが?

排水口のトラップの封水が無くなると排水管内に生息するチョウバエが室内に侵入してきます。写真にあるような形状で体長は約4ミリ程度です。もし家の中で発見した場合は排水トラップの封水を確認し、減っている様であれば足してください。※夏場などに長期間不在にした場合に封水が蒸発して臭気や害虫が侵入してきます。

外部の共用部においてチョウバエが発生している場合、排水用のマンホール(会所桝)が経年劣化により破損している可能性があります。たとえば、会所桝に穴が開いていたり、埋設された排水管が割れていたりすると、周囲の土が流出し、地盤の陥没とともに排水管からチョウバエが出てくる原因となることがあります。 このため、排水管清掃時などの機会に、会所桝およびその周辺の状況を点検していただくことをおすすめします。

排水から害獣!

家の中でネズミがかじるような音がするのですが?

マンションにおいては1階の住戸で発生する確率が高いのですが、洗濯機の防水パンの排水管の接続にフレキ管(樹脂のジャバラ配管)を使用している場合に、公共下水道から侵入してきたネズミがフレキ配管をかじって、大きな穴を空けて屋内に侵入するケースがあります。寝静まったときに物音がするなどの異変があったり、台所の収納庫に穴が開けられていたりする場合には洗濯機防水パンの排水管を調べてみてください。

    

※床スラブ上にネズミの糞が認められます。

排水から泡!

泡による排水トラブルについて

マンションにおいては、排水立管に接続された最下階(2階または3階)の住戸で、特定の排水トラブルが発生するケースが見られます。

これは、洗濯時に洗剤を過剰に使用したことで、洗濯排水に多量の泡が含まれ、1階の床下ピット内や共用部天井内の横引き配管に泡が滞留し、通気不良を引き起こすことが原因です。通気不良により配管内に正圧が発生し、最下階に接続された便器の封水が跳ね出すことで、封水が失われてしまいます。

その状態で上階からの排水が流れると、配管内に残っていた泡が押し出され、封水が切れた便器から室内へ逆流する場合があります。近年は、シックハウス対策として24時間換気が常時稼働しており、室内が負圧になりやすいため、泡がさらに室内へ引き込まれる傾向があります。

現在では、時短をうたった低発泡タイプの洗濯洗剤が主流となり、このような事故は減少しています。しかし、洗剤を大量にこぼして流してしまった場合や、YouTube等で紹介されている「台所用洗剤をロータンクに入れる」といった誤った使用方法の影響により、年に数回は類似の事故が発生しています。

     

排水ポンプ故障!

地下ピットに設置された排水ポンプ

マンションの地下ピットには、電気配線や給排水などの重要な設備が設置されています。これらを湧水などによる劣化や水没事故から守るため、排水ポンプが設置されています。

特に湧水には、建設時に使用された土壌改良材や栗石に含まれる再生砕石などから溶け出した石灰分が含まれており、これらが排水槽に高濃度で堆積すると、結晶化して排水ポンプの吸込口やインペラーに付着し、詰まりの原因となります。

このような状態になると排水ができなくなり、排水ピット満水警報が発報されます。湧水や雨水の流入量が多い場合には、電気・ガス・水道などの重要設備が水没する恐れがあります。

その際は、排水ポンプを引き上げて分解整備を行い、スケール(付着物)を除去する必要があります。

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排水ポンプの吐出配管には、バルブや逆止弁が設置されています。逆止弁が故障すると、本来は吐出配管を通じて外部へ排出されるはずの排水が、壊れた逆止弁を通じて排水ポンプ側へ逆流する不具合が発生します。この場合、一時的に排水ピットの水位が上昇し、満水警報が発報されますが、水位が一定以上に達すると、停止中だった排水ポンプ(逆止弁が故障している側)が起動して排水を開始します。

しかし、逆止弁を交換しない限り、この現象は繰り返されるため、排水槽の満水警報が継続的に発報されることになります。そのため、故障していない側の排水ポンプを一時的に停止させ、問題のある排水ポンプのみを単独運転に切り替えて、速やかに逆止弁の交換を行う必要があります。

 逆止弁故障→ 

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フロートスイッチ付きの自動型排水ポンプでは、フロートスイッチの故障がつきものです。排水ポンプ本体は、ステンレスや樹脂を使用することで長寿命化が図られていますが、水密性が重視される構造のため、フロートスイッチの交換は容易ではありません。交換を行う場合には、メーカー工場での分解整備が必要となり、部品交換後には水密性能の再試験も行わなければなりません。そのため、現場では代替ポンプを一時的に設置し、故障品を取り外して持ち帰る必要があります。これらの工程を踏まえると、フロートスイッチの修理よりも新品ポンプへの交換の方がコストを抑えられるケースが多くなります。

耐久性やメンテナンス性を重視する場合には、自動型ではなく非自動型の排水ポンプと排水ポンプ制御盤を組み合わせた方式が有効です。初期費用(イニシャルコスト)は高くなりますが、長期的にはランニングコストの低減につながります。

←自動  非自動→

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特に地下ピット式の機械式駐車場においては、排水ポンプの故障により機械装置だけでなく、個人の資産である車両が水没する危険性があります。そのため、日常的な点検において異常が認められた場合には、速やかな対応が求められます。 近年は線状降水帯の発生に伴う集中豪雨が増加しており、突発的な浸水リスクが高まっています。こうした状況を踏まえ、排水ポンプについては予防保全の観点から計画的な交換をお勧めします。


排水ポンプ本体の故障ではありませんが、屋外設置の機械式駐車場においては、風で飛ばされたビニールや落ち葉、さらには車両から漏れたオイルや機械のグリスなどが排水ポンプに吸い込まれることで、排水機能が妨げられる可能性があります。
通常は、排水ピット(窯場)にネットを設置して異物の侵入を防いでいますが、オイルやグリスのような油脂類に関しては、完全に防止することが難しいのが現状です。
また、排水ポンプ本体にはエアロック(空気噛み)を防ぐための通気穴が設けられていますが、この通気穴が油脂分で詰まると、雨の少ない時期にピット内の水が干上がった際、排水ポンプ内に空気が混入し、次に雨が降った際にその空気が排出されずエアロックが発生し、水没のリスクが高まります。
弊社が管理する物件では、このような事態を防ぐため、排水ポンプの吐出配管に小さな穴を設けてエアロックを回避する対策を講じております。※特に排水ポンプの吐出側の配管がヘッダーで接続されて1本の配管にて外部会所へ排水される構造で発生しやすい。各排水ポンプごとに配管を外部会所まで接続している場合には逆止弁を設置していないため発生しにくい。

排水管から漏水!

鋳鉄製排水立管より漏水

マンションにおいて、排水立管により最上階から最下階の床下を通って公共下水道へと排水される構造になっております。静音・耐震性に優れた鋳鉄製の配管を長年使用してきました。60年は使用できるといわれておりましたが、近年、30年程度で鋳鉄製の排水管に縦割れが発生して漏水に至るケースが散見されるようになりました。

特に汚水(トイレ排水)ではなく、台所系統を含む雑排水系統の立管で顕著に発生しています。原因としては、金属製の配管であることに加え、排水に含まれる油脂分によって微生物が繁殖し、その微生物(硫酸還元細菌)が発生させる硫化水素により配管内面が腐食します。内面が荒れてくることで汚れがさらに付着しやすくなり、微生物の温床となる悪循環が生じます。

その繰り返しにより鋳鉄配管の肉厚が減るとともに、排水の温度に起因する膨張収縮に加えて鋳鉄配管の製造時に発生する残存応力や、施工時に配管を積み上げることによる荷重で発生する応力に耐え切れなくなると配管に縦割れが発生するものと思われます。

汚水系統の配管においてはトイレから流される有機物は台所系統に比べて少ないことに加えて排水量が多いことから、配管内に微生物の栄養分となるものが少ないために劣化の度合いが台所系統に比べて少ないと考えられます。

近年では排水立管には樹脂管を使用しておりますので、腐食等の劣化の心配はないため同様の事例はありませんが、金属配管に比べて膨張収縮による接手部の破損が懸念されますので適切に伸縮接手を設置する必要があります。

  

  

鋼管製排水管より漏水

マンションでは、防火区画を貫通する排水管について、区画の前後1メートル以内を不燃材料で施工することが法令で定められています。現在では、耐火二層管などの不燃性樹脂管が主流となっており、多くの新築マンションで使用されています。

一方で、従来の建物では、亜鉛メッキ鋼管(鉄管)が使用されているケースが多く見られます。この鋼管は、水道水に含まれる塩素や、排水中の酸・アルカリ成分の影響を受け、表面の亜鉛メッキが剥がれてしまうと、内部の鉄が腐食しやすくなります。特に、排水中の有機物が硫酸塩還元菌により分解されて発生する硫化水素が腐食を加速させる要因となります。

また、金属配管では接続部に「ねじ切り加工」を施して継手を取り付けますが、この部分は肉厚が薄くなるため、腐食が進行しやすく、漏水の原因となりやすい箇所です。

特に注意が必要なのは、排水が常時流れる配管の下面で、腐食によって穴が開き、漏水が発生しやすいことです。

このような亜鉛メッキ鋼管の劣化は、築25〜30年を経過すると漏水に至るケースが多く見受けられます。そのため、リフォームや配管更新の機会には、耐火性能を満たした不燃性の樹脂管への交換を強くお勧めします。

  

伸頂通気管より漏水

マンションの屋上には、排水をスムーズに流すために『空気を取り入れるための「通気管」』が設置されています。

通気管の配管には、亜鉛メッキ鋼管(鉄管)が使用されているケースが大半です。この鋼管は、水道水に含まれる塩素や、排水中に含まれる酸性・アルカリ性成分の影響を受け、表面の亜鉛メッキが剥がれると、内部の鉄部分が腐食しやすくなります。特に、排水中の有機物が硫酸塩還元菌(SRB)によって分解されて発生する硫化水素は、鉄の腐食を加速させる大きな要因となります。

伸頂通気管(屋上まで直線的に伸びる通気管)は、本来まっすぐ屋上へ配管されるべきですが、屋上に設備架台などの障害物がある場合、室内側でクランク状に配管されることがあります。こうした接続部には、管にねじ切り加工を施して継手を取り付けますが、この加工により管の肉厚が薄くなるため、腐食が進行しやすくなり、漏水の原因となるリスクが高い部分です。

このような場合、築25〜30年を経過すると、接手部分が腐食により脱落し、漏水に至るケースが多く発生しています。そのため、最上階でのリフォーム工事や配管更新の機会には、伸頂通気管の状態を必ず確認することを強くおすすめします。

  

αコーティング鋼管製排水管より漏水

アルファコーティング鋼管は、昭和50年代に開発された排水管で、薄肉の鋼管に塩化ビニル樹脂をコーティングしたものです。軽量化と、ネジ接合ではなく差し込み継手による施工の省力化が特徴でした。

塩化ビニル樹脂の密着性が低く、経年劣化により被覆が剥がれやすいという問題がありました。それにより、被覆が剥がれた部分は腐食しやすく、漏水の原因となることがありました。

現在は耐火二層管など、より優れた排水管が登場したことで、現在ではほとんど使用されていません。。

  

銅管製排水管より漏水

昭和50年前後に某大手マンションデベロッパーが建設した一部のマンションでは、排水管に「銅管」が採用されていました。銅管は、アルファ鋼管に比べてさらに肉薄で軽量であり、ネジ接合ではなく差し込み式の継手を用いることで施工の省力化が図られていました。

銅イオンには強力な殺菌・抗菌作用があり、細菌やウイルスの活動を抑制する効果があることから、排水管内部に微生物による嫌気性汚泥が発生しにくく、結果として汚れの付着や管の劣化がほとんど見られません。

しかしながら、専有部の横引き枝管との接続部には鋳鉄製の接手が使用されていたため、その接手部に発生した嫌気性汚泥により酸性環境が生じ、立管の接手付近の銅管下部に腐食による穴が開き、漏水事故が多く発生しています。

  

塩ビ製排水管より漏水

塩ビ製の排水管は、気温の変化によって膨張・収縮します。このため、配管の接続には伸縮接手を設置する必要がありますが、古いマンションでは伸縮接手が設置されていないケースも見受けられます。

特に、雨水配管と比較すると、温水が流れる排水管では配管がさらされる温度差が非常に大きくなります。その結果、繰り返される膨張・収縮によって、接手部の中でも比較的構造的に弱い横枝管の接続部において、割れが生じやすくなります。

添付の写真は、築40年程度を境に、立管の横枝管接続部で管の割れによる漏水事故が相次いで発生した例を示しています。

下部割れ→


※塩ビ配管は、一般的に引張強さにおいて金属配管に比べて弱く、特に低温環境下での衝撃に脆くなる傾向があります。


塩ビ製埋設排水管より漏水

建物外部の排水桝までの埋設排水管には、主に塩ビ製の排水管が使用されています。外部の横主管の高さ(レベル)に合わせるため、排水桝の手前で継手を用いて調整しているケースが見受けられます。

排水横主管や建物から延びる埋設排水管は、建物の基礎に近い位置に敷設されるため、埋戻し土の上に配管されていることがほとんどです。このため、埋戻し時の転圧不足や、経年による圧密沈下により、排水桝や埋設管を支える地盤が沈下すると、配管に過度な応力がかかります。特に、構造的に弱い接手部分が破損し、排水が漏れ出すリスクがあります。

漏れ出した排水は、周囲の土を流失させたり腐敗させたりして、さらなる地盤沈下を引き起こします。最悪の場合、排水管が破断し、その上部の地面が陥没して破断部分に土砂が詰まり、専有部に排水が逆流するなど、大規模な事故につながるおそれがあります。


※通常、配管の敷設時には良質土を用いて埋め戻しを行いますが、工事中に発生した残土やガラ(コンクリート片など)をそのまま埋め戻し材として使用しているケースもあります。このような場合、ガラの隙間に細かい土が入り込むことで沈下がさらに進行しやすくなります。

阪神淡路大震災の際にはこのような建物から外部排水桝までの配管で破断して排水不良を起こすケースが大半でした。建物内においては建物と配管が同様の動きをするために被害を受けるケースが少なかったことを記憶しています。



コンクリート製排水桝より漏水

建物外部に設置されたコンクリート製の排水桝では、各系統の排水が合流し、最終的に公共下水道へと排出されます。

コンクリートは本来アルカリ性の性質を持っていますが、排水に含まれる酸性成分の影響により徐々に腐食し、排水桝の底部に設置されているインバート(底面の水路)に穴が開くことがあります。その結果、排水が桝の外へ漏れ出し、周囲の地中へと浸透してしまいます。

漏れ出した排水は、周囲の土を流失・腐敗させ、地盤沈下を引き起こす原因となります。また、排水桝内に汚物が滞留すると配管が詰まりやすくなり、マンホールからの汚水の溢れや、最悪の場合には排水桝周辺の地盤が陥没するなどの重大な事故につながる恐れがあります。

  


※定期的に実施される排水管清掃では、こうした排水桝の劣化状況についても点検が行われ、異常があれば特記事項として報告されます。早期の段階でインバートのモルタル補修や、樹脂製排水桝への更新を検討することが重要です。
補修時期が遅れて配管の勾配不良が発生するとインバートの補修ではなく入れ替えが必要となり、補修費用が増大します。



洗面台排水管より漏水

洗面台下収納庫内に排水管が設置されており、古いマンションなどでは金属製(黄銅にクロームメッキ)の配管が使用されております。

黄銅はある程度の耐食性がありますが、特定の条件下では腐食が進む可能性があります。特に、弱酸性の水溶液中や、塩分、化学薬品などにさらされる環境では、脱亜鉛腐食や応力腐食割れなどが起こりやすいため注意が必要です。

洗面を使用後に十分に清水を流さずに放置した場合にトラップ部分に残った排水に微生物が繁殖し、硫化水素などを発生させるために金属が劣化していきます。

その結果、配管に穴が開いたり、腐食により薄くなった配管が収納庫内の収納品により押されて破断することで漏水が発生します。

※金属配管を長持ちさせるためには水の使用後に排水トラップ内に汚れを残さないように、使用後に十分な清水を流すことが重要です。

  

台所排水管より漏水

台所シンク下収納庫内に排水管が設置されており、ゴミ受けを兼ねた大きなワントラップが設置されているのが一般的です。

キッチンに使用される排水トラップは樹脂製がほぼ100%近く普及しておりますが、その接続部にはゴムやシリコン製のパッキンが水漏れを防ぐために使用されております。

パッキンは経年劣化により弾性を失い、密閉力が低下することで漏水につながります。

排水が漏れると収納庫内の衛生状態が悪化するだけでなく、発見が遅れると階下への漏水にもつながりかねませんので、早期発見とともにパッキンの交換が必要です。

排水トラップ以降の配管の接続部袋ナット内にもパッキンが入っておりますので、定期的に点検を行ってください。

  



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台所シンク下収納庫内の排水トラップ二次側の袋ナットから配管が抜け落ちていたケース。
キッチンのリフォームをされた際にトラップ以降の排水横引き配管の勾配の調整にレベルバンドを使用せずに配管の残りで支えて養生テープで固定していたものがテープが剥がれて、ずれたために配管が下がり接続部が抜け落ちて下階へ漏水した。
リフォーム時の配管の施工不良はよく見かける事例です。

  



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台所シンク下収納庫内の排水トラップ一次側のワンタッチ接続部が嵌っていなかったケース。
キッチンのリフォームをされた際に排水トラップの接続がメーカーの施工要領通りに施工されていなかったために配管がつながっていなかった。
本来は赤いラインが見えなくなるまで差し込むとカチッと音がして外れなくなりますが、何らかの理由で最後まで差し込まなかったために水漏れが起きたようです。

  

浴室排水管より漏水

まれなケースではありますが、浴室排水トラップの取り付けフランジの強度不足による破損で階下への漏水が発生しております。

浴室の排水は台所と同様に温水が比較的長い時間流れることにより配管が膨張します。特に冬場においては40度近い温度から5度近くまで冷やされることから、膨張収縮による配管の長さの変化で排水トラップに力がかかり、排水トラップとユニットバスの床面の取り付け部が破損したと思われます。

※排水トラップは詰まり防止の観点から定期的(月に一回程度)に点検清掃を行ってください。

  

雨水排水管より漏水

ベランダの雨水排水管からの漏水でよく見られるのが、呼び樋の天井貫通部から水があふれて漏れてくるケースです。

ベランダでガーデニングをしており、プランターなどを置いている場合、水やりによって土が流れ出し、床の排水溝から呼び樋を伝って立管へと流れ込みます。しかし、長期間にわたり土が堆積すると呼び樋が詰まり、上階の床排水金物と呼び樋の差し込み口の隙間から、下階へ漏水する原因となります。そのため、排水口へ土を流さないよう注意することに加え、定期的に排水口に水を流して呼び樋内部に土が残らないようにすることが重要です。

また、雨水排水管には通常、塩ビ製の配管が使用されており、気温の変化によって膨張・収縮します。このため、立管には伸縮接手を設置する必要がありますが、これを省略し、呼び樋が接続される接手部の上部を接着せずに対応するケースも見られます。こうした場合でも、呼び樋の固定方法が不適切だと、膨張収縮により接手が割れて漏水するおそれがあります。※雑排水管であれば雨水よりも高い温度のお湯が流れ、さらに膨張収縮が大きくなりますので、伸縮対策は非常に重要です。

下部割れ→


※塩ビ配管は、一般的に引張強さにおいて金属配管に比べて弱く、特に低温環境下での衝撃に脆くなる傾向があります。


排水管清掃

清掃

排水ってなんですか?

主な排水の種類
1. 生活排水
 キッチン、洗面所、バスルームから流れる水です。食器洗いの際の水や、歯磨き後の水、シャワーの使用後の水などが含まれます。
2. トイレ排水
 トイレを使用した後の水です。これは特に衛生上、適切な処理が必要です。

排水管の役割
排水管は、各部屋で使った水(使用済みの水)を建物全体の排水設備(立管)に流します。この設備を経由して排水は建物床下から公共下水道へと流れ、最終的には処理施設で浄化されます。

排水管清掃の重要性
排水管は日々使われることで、内部に油脂や髪の毛、食べかすなどがたまりやすくなります。これを放置すると、詰まりや悪臭の原因となり、最悪の場合は水漏れなどの大きなトラブルを引き起こすことがあります。定期的な排水管清掃は、これらの問題を未然に防ぎ、快適な生活環境を維持するために欠かせません。


排水トラップは誰が清掃するのですか?

排水トラップは、定期的に(月に1回程度)清掃することが重要です。髪の毛や食べかす、油脂などが溜まると、水の流れが悪くなり、悪臭の原因となることがあります。定期的にメンテナンスを行い、トラップ内の異物を取り除くことで、快適な住環境を維持しましょう。
なお、分解方法などの詳細は、ご入居時に販売主がお配りしている取扱説明書をご参照ください。

排水管清掃は無料ですか?

マンションの場合、管理費より支出されます。別途徴取や当日の集金はありません。※契約内容によっては当日徴収の場合があります。 ただし、予定日以外に個別実施をする場合は、費用負担となる場合があります。

排水管清掃の日程はどうやって決めていますか?

マンションの場合、ご契約の管理組合様もしくは管理会社様との契約内容により総会で承認された事業計画に基づいて、設定させていただいています。決められた日程に一斉清掃することにより戸当たり単価を低く抑えることができます。

雑排水管清掃は受けないといけませんか? また受けないとどうなるのですか?

排水設備の衛生管理は、建物全体の衛生管理の一環として重要な位置付けにあります。排水にはさまざまな混入物が含まれるため、排水設備が適切に設計・施工されていた場合でも、使用者の不注意や設備の劣化、清掃の不徹底によって排水不良や管閉塞が発生することがあります。

さらに、排水の逆流による汚損事故が発生すると、不便で不衛生、かつ危険な状態に陥ります。これを防ぐためには、衛生管理の観点から定期的に清掃を行い、予防することが不可欠です。

もし、どうしても予定日に在宅が困難で作業を見送られる場合には次回清掃日には必ずご在宅いただき、それまでは洗い物の後にしっかりと清水を流していただくことで汚れの発生を抑えることができます。

私宅で水を使用していないのに、流し台からポコポコと変な音がしますが、どうしてですか?

台所の排水には、特に油脂類が多く含まれています。集合住宅では、油脂類が排水立て管の内壁に付着すると、排水管内が狭くなり、他の住戸から排水された際に排水管内で過大な空気圧が生じます。この空気圧の影響で、誘導サイホン作用が発生し、異臭やゴボゴボ音を伴う封水の吹き出し現象を引き起こすことがあります。
また、排水立管に金属管が採用されている場合、経年により局所的に大きな錆瘤が発生することがあり、これも同様の現象を引き起こす原因となることがあります。
加えて、台風や冬場の北風など風が強い日にも排水立管の最頂部に設置されている通気配管から空気が吸い出されて空気圧変動が発生することもあります。
このような現象が発生した場合、共用部の排水管に原因があることが予想されますので、管理者(管理組合・管理会社)にお申し出いただく必要があります。

排水管清掃の適正な清掃周期は?規定はあるのですか?

集合住宅の排水管清掃に法的な義務はなく、実施していないからといって罰則があるわけでもありません。 しかし「建築基準法第12条」では排水設備の腐食や漏れの点検と報告について「建築物環境衛生管理基準」では排水設備の補修及び清掃について、義務付けられています。

集合住宅の排水管清掃は、築年数や規模及び配管材質によって推奨される頻度が異なりますが、一般的には1年に1回程度が目安です。

排水管は使用頻度や使用方法及び配管材料や施工状況により汚れの発生度合いが大きく異なります。特に配管の内部は見えませんので、臭気や逆流に伴う漏水事故を未然に防ぐために予防保全として実施するのが最良です。

日程変更はできますか?

変更により高圧洗浄用のホースの移動が発生しますので大きな変更には対応ができませんが、作業に支障が出ない変更であれば可能な限りお受けいたします。先ずは下記の番号にお問い合わせください。
TEL0798-44-5506 月~金 8:00~16:30
注)土・日・祝・特別休暇(年末年始・お盆・ゴールデンウィーク等)期間の受け付けはしておりません。月曜日などの休日明けは、お電話が込み合う場合がございますので、ご了承ください。なお品質向上のため通話を録音させていただく場合がございますのでよろしくお願いします。

ベランダのスロップシンクの排水管は清掃しますか?

通常、スロップシンクの排水管には汚れが発生しにくいため、定期排水管清掃の契約には含まれておりません。ご要望がある場合は、管理組合様へ仕様変更のお申し出が必要です。

排水管清掃にかかる時間は?

排水管清掃に必要な時間は、標準的な台所、洗面、洗濯、浴室の清掃で約15分程度です。

ただし、排水管の使用状況や配管の材質、立管までの距離、施工状況によって汚れの付着状況が大きく異なります。そのため、汚れの付着が多い場合には所要時間が超過することがあります。
一方で、丁寧にお使いの場合には、清掃時間が短縮されることもあります。

専有部の場合に逆噴射の高圧洗浄ノズルを使用して上流側から清掃しますので、清掃中に洗浄水が排水口側へ戻ってきます。その洗浄水の汚れ具合で汚れが落ちたかを判断していますので、水の汚れが無くなった時点で作業完了と判断します。

洗濯

洗濯機はどの程度動かせばよいですか

洗濯機防水パンの排水トラップを分解して清掃を行います。そのため、排水トラップの上に洗濯機や乾燥機の足が乗っている場合や、手が入る隙間がない場合には清掃を行うことができません。事前に洗濯機を移動するか、かさ上げして、排水トラップを分解・清掃できる状態にしておいてください。
また、洗濯機本体や内装材、防水パンの故障や破損を防ぎ、作業員のけがを防止する観点から、弊社では洗濯機の移動や方向転換は承っておりません。何卒ご了承ください。このページの末尾に「洗濯機防水パンに関するお願い」の冊子が添付されておりますので詳しくはそちらをご覧ください。

  

台所

排水管清掃の際、収納庫の中の物はどの程度出せばよいですか?

排水管清掃では、作業員が点検を行えるよう、収納庫内の配管が見える程度に物を出していただければ結構です。
ただし、ディスポーザーが設置されている住戸では、収納庫内に掃除口が設置されているため、両手を入れて清掃ができるよう、広くスペースを確保していただく必要があります。スライド式の収納庫の場合、引き出しを外して作業を行うことになりますので、大変お手数ですが、中の物をすべて出していただく場合があります。※下の写真を参考にしてください。

 

洗面

排水管清掃の際、収納庫の中の物はどの程度出せばよいですか?

排水管清掃では、作業員が点検を行えるよう、収納庫内の配管が見える程度に物を出していただければ結構です。
なお、洗面ボウルにはオーバーフロー配管が設置されていますが、長期の使用により内部にカビが発生し、臭気の原因となる場合があります。この配管内部は構造上、洗浄が難しいため、臭いが気になる場合には市販のカビ取り剤などをご使用ください。

浴室

何故、浴槽にお水を溜めておく必要があるの?

排水管清掃後に溜め流しをすることにより、配管内部に残った汚れを一気に流しきって配管内部に汚れを残さないためです。浴槽の底から5~10センチ程度の水があれば十分です。
洗濯機防水パンに関するお願い 排水トラップの仕組みと日常清掃方法